刑事ものミステリーの短篇小説です。
「テミスの剣」で登場した
高円寺静のその後がわかる1冊でもあります。
短編ですが
毎回、登場人物は同じです。
主人公・葛城公彦の成長と
静おばあちゃんによる事件の背景に潜んだ
社会の闇、法律の矛盾、悪習の文化をズバリと切る所や
葛城公彦と高遠寺円の2人の恋仲の進展など
見どころが沢山あります。
1話、1話短い短編ですが読み応えあるミステリーばかりでした。
本と作家の情報etc・・
作家 中山 七里
岐阜県 出身
1961年 生まれ
活動期間2010年~
岐阜県の呉服屋の家に生まれる。
幼少期より常に本の虫で
将来は「本を書く人になりたい」と
話していた。高校時代から小説を書き始め
投稿、応募するも
ひっかからず落選。就職して 創作から身を引くのだった。
2006年ファンだった島田荘司のサイン会で
本物の小説家を前にして感銘を受け
20年ぶりに執筆を再開した。その後2009年、
『さよならドビュッシー』で
第8回このミステリーがすごいで大賞を受賞。『引用:Wikipedia』
タイトル・「静おばあちゃんにおまかせ」
5話構成のショートミステリー
ページ数 363p
2012年 7月 発売
静おばあちゃんにおまかせ | 2018年 10月時点でのAmazonでのレビュー評価です。 | ||
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総合評価 |
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レビュー件数 | 19件 |
静おばあちゃんにおまかせ |
静おばあちゃんにおまかせ~あらすじ
主人公・葛城の
元上司・椿山が殺人容疑で逮捕された。
殺された男の体内に残された
弾丸の線条痕から殺しに使われたのは
椿山の携帯する銃。
椿山から刑事とは何かを学んだ葛城は
彼の無実を信じ椿山の無実をはらす為、
事件の真相をあばこうとするが・・・
朝倉喜美代(65歳)
背後から陶器の花瓶で殴られ
死亡。
第一発見者は孫娘の朝倉美緒。
状況から顔見知りの犯行と見てとられ
さらに喜美代の長男・長女夫妻は
金に困っているとの話。
遺産目的の犯行かと目星をつけた警察だが・・・
全員にはアリバイがあり
犯行は不可能であった。
困った葛城はまた、円に頼る羽目となる・・・
宗教団体「至福の園」総領である龍人は
信者達の目の前で一度死んで見せ、
そして、生き返ったという・・・
それを売りに信者を急激に増やし「至福の園」は
急成長をとげた。
その胡散臭さ満載の「至福の園」には
財部(たからべ)管理官の直属の上司警視庁
釘宮警備部長の娘・釘宮亜澄が
「至福の園」に入信していたのだった。
釘宮警備部長は財部(たからべ)に
娘を「至福の園」から
脱退させてほしいと
財部(たからべ)に頼み込んでいた。
財部(たからべ)は頭を悩ませ、思い出したのが
前回の難解な事件2件を
見事短期解決した葛城巡査部長、彼だった。
その任務に白羽の矢が立ち
「至福の園」への
潜入捜査を言い渡された葛城は
またも円に相談・・・
復活の義と称する
死んで甦る儀式のトリックを暴き
釘宮亜澄や信者達の目を
覚まさせようと葛城と円のコンビが
奮闘するのだった。
建設中の新名所東京スーパータワーで
事件が起きた。
地上450メートル付近で
タワークレーン解体中に4号機のタワークレーンを
操縦していた須見田が
突然、操縦中死亡した。
死因は腹部に刺された建設現場で使われる
大型のカッターナイフだった。
クレーン操縦中、
しかも密室で一体どうやって殺害されたのか?
独裁国家 小国パラグニアの
大統領・オマールが来日。
17階にあるホテルの1室で銃声が一発鳴り響く・・・
大統領・オマールは
頭を銃で撃ちぬかれ死んでいた。
外交問題に発展しかねないと
危機を感じた警察上層部は事件の早期解決を求め
この密室殺人のトリックを暴くべく
過去4回、難事件のトリックを見事暴いた
葛城巡査部長に一任した。
そして、また葛城は円に相談。
円は円で祖母・静に相談・・・
現場は17階の部屋。
そして、密室。
銃声が鳴った時、
ルームサービスを運んできたボーイ桑島が
エレベーターを降り護衛の兵が部屋の外に4人
同じ階の別室で大統領夫人は電話中。
夫人の電話の相手は
ホテルのフロント係り新井・・・
密室、完全警護状態で
大統領は部屋で一人
遺体のそばには銃と携帯電話・・・・
独裁国家に異議唱える者の犯行か
内部の犯行か・・・
それとも自殺か・・・
さらに、ラストで
静おばあちゃんの最大の謎があかされる。
静おばあちゃんにおまかせ~感想
表紙の絵柄のほのぼのさは何なのか・・・
読んで見れば、
1話、1話の完成度が非常に高い。
トリックも無理なく犯人の動機も
筋が通る展開でした。
ストーリー展開も短いながらも綺麗にまとまっており
非常に楽しめる本でした。
読み手も事件のトリックを考える楽しみもあり
物語もスッキリおわり
葛城・円の親密度展開、
おばちゃんのためになる話
トリックの内容・犯人の動機
実におもしろい本でした。
流れとしては、
↓↓
↓↓↓
↓↓↓
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事件の背景、犯人の心情などを
自己分析し語る。
↓↓↓
ヒントを与える。
↓↓↓
事件解決。
↓↓↓
葛城と円が親密になる。
毎回同じ展開の流れだが
事件のトリックや動機がしっかりしており
葛城と円の進展も気になるストーリー展開が飽きさせない。
静おばあちゃんの話にも
芯があるのもいい。
事件の内容より
おばあちゃんの話が
ものすごく説得力があり、
事件背景に
照らし合わせての時代の変化や
悪い風習、人間、社会、法律、文化など
大正生まれの彼女の話は
うなずいてしまう事ばかりで
勉強になりましたといった感じで
楽しく読ませてもらいました。
読み手側も事件のトリックを
おばあちゃんのヒントを元に
考える楽しさもある上、
ストーリーの進めかたもうまい。
一番驚いた事は全ての事件の内容や
トリックよりも最終話で
静おばあちゃんの正体に
「いやいや いやいや・・・
マジで・・・
なに、この展開・・・・」と
予想の斜め上をいく
ビックリの締め方にあんぐりでした・・・