2017年にはドラマ化にもなった作品です。
警察組織の冤罪をテーマにし
それに抗う刑事の一生を追った濃厚なストーリーでした。
本書は中山七里先生の
過去作品ともクロスオーバーしており
そういった意味でも
楽しめる作品になってました。
クロスオーバーとは・・・・ ある小説(作品・物語)の登場人物が、
その小説(作品・物語)の設定を保ったまま
登場する事。
そして、中山七里先生は
相変わらず爽快感ある作品を提供してくれます。
本と作家の情報etc・・
作家 中山 七里
岐阜県 出身
1961年 生まれ
活動期間2010年~
岐阜県の呉服屋の家に生まれる。
幼少期より常に本の虫で
将来は「本を書く人になりたい」と
話していた。
高校時代から小説を書き始め
投稿、応募するも
ひっかからず落選。
就職して 創作から身を引くのだった。
2006年ファンだった島田荘司のサイン会で
本物の小説家を前にして感銘を受け
20年ぶりに執筆を再開した。
その後2009年、
『さよならドビュッシー』で
第8回このミステリーがすごいで大賞を受賞。
48歳での小説家デビューとなった。
エレクトーン教師の妻と息子
と娘の4人家族である。『引用:Wikipedia』
タイトル・「テミスの剣」
ページ数 388p 文庫版
発売日 2014年 10月
『連続殺人鬼カエル男』
『贖罪の奏鳴曲』
『切り裂きジャックの告白』
『静おばあちゃんにおまかせ』と
クロスオーバーする作品になっております。
2017年9月にテレビ特別企画として
ドラマ化しました。
テミスの剣 | |||
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総合評価 |
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レビュー件数 | 32件 |
「テミスの剣」~あらすじ
昭和59年 不動産業を営む
久留間夫妻を殺害し現金を奪い
逃走した楠木明大。
これを新米刑事 渡瀬と
ベテラン刑事 鳴海 コンビが
犯人 楠木明大を逮捕した。
容疑者 楠木 明大は法廷で無実と
刑事達の強引な取り調べと
証拠の捏造を訴えるも
裁判側は楠木 明大の
動機と経済的事情を把握しており
さらに
揺るぎない状況証拠と
物的証拠の前では
その訴えは虚しく
論理が支配する法廷では
その声は届くことはなかった・・・・
裁判長裁判官 高円寺 静は楠木 明大に
死刑判決を言い渡した・・・
裁判から2年後
死刑執行を受ける前に楠木 明大は
独房内で自殺を遂げるのだった・・・・
そして5年後
ある事件をきっかけに楠木 明大が
無実であることが明かされる。
楠木を逮捕した渡瀬は
当時組んでいた先輩刑事の鳴海が
物的証拠の捏造をしており
鑑識の人間も加担した事実を突き止める。
警察組織は
すぐさま隠滅を図ろうとするが
楠木 明大を逮捕した渡瀬は
自身が犯した冤罪の罪を
償うべく
自身の正義に従い
世間へ公表したのだった・・・・
その結果・・・
事件関係者の
警察 検事 裁判官 弁護士達は
マスコミのいい餌種になり
この事件に関わった多くの人間の人生を奪い狂わし
正義と思われたその行為は
地獄を見せた。
そして、23年後
忌まわしきあの冤罪に絡んだ奇妙な事件が
起きる。
渡瀬の前に立ちはだかったその事件は
23年前の
久留間夫妻強盗殺人事件に係わる
重大な真相が
隠されていたのだった。
「テミスの剣」~感想
実に読みごたえのある物語でした。
読みやすい文体と
作者の豊富な知識と引き出しが多く物語が
きっちり出来上がっています。
肝となる登場人物達の
情景、心情や心理描写が細かく描かれており
感情移入しやすく緊張感や緊迫感が
ずっしり伝わってきました。
物語に入りやすいうえに
各登場人物達の性格や人間性が細かく
きっちり描かれているので物語がしっかりと出来あがりつつ
目的にむかって進んでいる感触があるので
この先の展開にワクワクと期待を持てます。
そして、この1文
-
法廷を支配するのは論理である・・・・が、
-
裁きの場所で一切の感情を封殺することが
-
果たして是であるか。
裁判長である高円寺静が判決文を書くのに
どれほど悩み無罪を訴えた被告に対しての
わずかな揺らぎ、心の内が見える様子は
その重苦しい場面が見えるようで罪を裁く側の人間の苦悩が
もの凄く伝わりました。
実に難しい難題を投げかけ
結果的に死刑を言い渡す静が
自分の判決が間違いだったかのような
不穏な空気の見せ方が緊張感を煽り尾を引くように
何かあると予感させる
描き方に次の物語の展開が待ちきれない。
読むのがやめられないもしくは
ここで読むのをやめたらもったいないと思い
先へ先へと手が止まらなくなる
そんな本でした。
物語の8割は
冤罪の告白と主人公 渡瀬の
手にした権力の重さを思い知りながら
自分の罪と向き合う贖罪の姿、
乗り越えるさまが共感できるように
描かれています。
残りの2割は大きく成長した23年後の渡瀬が
かつての事件の真相を暴くミステリーになっています。
おまけ程度の物語にもみえましたが
事件の意外な真相が暴かれすっきりと終りました。
堅苦しい社会派ミステリーの
小説でしたが高円寺静の穏やかな正義の持論は
堅苦しさを忘れる論旨かたになにか諭される所が
ありました。
以前読んだ
「静おばあちゃんにおまかせ」を
読んでいたおかげでラストの渡瀬が高円寺静の
墓参りのシーンで葛城公彦と高遠寺円が渡瀬と
言葉を交わす所は感慨しかったです・・・・