個人的に好きな作家さんの1人です。
相変わらず分厚い本ですが
今回の物語もやっぱり面白かったです。
相変わらず京極夏彦先生の
おどろおどろしく、訳のわからないまま
読み手を物語の世界へ
引っ張り込むのが上手いです。
皿を巡り思惑が迷走、言葉失うラストで心壊れた
狂人を目撃せよ!!
本と作家の情報etc・・
作家 ・ 京極 夏彦
1963年3月生まれ
北海道 小樽市 出身
妖怪 お化けが大好きな面白いおじさんです。
代表作の京極シリーズは
500ページ(姑獲鳥の夏以外)を
超えるものばかりゆえにレンガ本と呼ばれる。
デビュー作は
「姑獲鳥の夏」(1994年)
安易な気持ちで書いて投稿した
小説が編集者の目に止まりデビュー。
江戸怪談シリーズ 番町皿屋敷をもとに
描かれた物語。
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2010年 発売
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ページ数 約771p
数えずの井戸 | |||
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総合評価 |
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レビュー件数 | 21件 |
数えずの井戸~あらすじ
父・青山鉄山が急死し家督を継ぎ
青山家の新たな当主となった青山 播磨。
彼は人生がつまらなかった。
何故つまらないか自身でも分からず
毎日がつまらないのだった・・・・
満たされない何かがわからず全てのことが
どうでもよく自分には何かがかけている・・・
それだけ気づいていた。
そんな青山 播磨に叔母がもってきた
縁談の話が持ち上がる。
相手は次期若年寄の娘 大久保 吉羅。
旗本や御家人の支配を軸とする将軍家の家政。
若年寄のお家と縁続きになれば青山家の出世にもつながり
千載一遇のチャンス。
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良縁であった・・・・(ようは逆玉の輿である)
叔母は意気込むが播磨はどうでもよかった・・・
その良縁を結ぶためには
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青山家家宝 姫谷焼十枚揃いの絵皿を
大久保家へ献上しなければならなかった。
しかし、皿が見つからない・・・・
青山播磨との婚姻を成立させたい
大久保家ご息女・大久保吉羅 自身、青山家家風を
知るためと偽り女中を引き連れ住み込みで
皿を探しに来たのだった。
播磨はうんざりした皿如きで何をと・・・
そんな折、青山家に家臣十太夫の計らいで
菊と名乗る娘が女中奉公することになる。
播磨は依然 菊と出会っており
播磨は菊を見つけると
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「儂じゃ儂じゃほれっあの時の・・」と色めき立った。
笑顔で菊に話しかける播磨。
それを見た大久保 吉羅は菊に対して
大きな嫉妬を募らせ始める。
何故ならこの家に来て一度も吉羅は播磨に
話しかけられたことがなく自分の前では常に
無表情を装う播磨に苛立っていたのだ。
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青山家で起こる家宝の皿に逆 玉の輿の婚礼・・・
播磨のかつての悪友遠山主膳はこれを聞きつけ、かつてより
気に食わなかった青山播磨のすべてをぶち壊そうと
動き出す。
青山の女中 仙は 大久保吉羅の不貞を知り
播磨に密かに思いを寄せる・・・
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仙は言う「絶対、皿は出さないっ」
そして、隠していた菊の過去も事情も露呈するとき・・・・
徐々に青山家で不穏な歪みが忍び始める・・・・
青山家 廃絶 ・・・
その後、
青山家の井戸から皿を数える女の声が聞こえると
いったいあの声は・・・
あれやこれやと噂が飛び交う青山皿屋敷の怪事件。
当事者全員死亡のため真相はわからずじまい。
はたして その真相とは・・・・
数えずの井戸~感想
771ページと相変わらずのページ数ですが
面白いです。
皿を数えるお菊の幽霊
「1枚たりなぁ~ぃ」 は有名なセリフ。
怪談話をもネタに描かれた物語ですが
果たしてどんな話か。
ミステリー、サスペンス、時代小説、純文学
とても気になり手に取ってみたところ
悲しい恋物語でした。
それぞれがそれぞれを思い
すれ違い、相手に伝わらず
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そして、惨劇になる何とも歯がゆい物語でした。
前半はだれる感じで淡々と日常を語りながら
各登場人物たちの性格や思い、過去を語り
そして、中盤に向かって徐々に登場人物が青山家に
集まりだし物語の歯車がガッツリ絡まりだしてきます。
物語が急速に動き出すのが中盤も少し過ぎたころ
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仙の「皿は絶対ださないっ」と
菊の側でぽつりとうっかりつぶやいてしまってから
面白くなりだします。
前半であれほど無気力な青山播磨が菊のために
あれこれと庇いだてしたり激昂したりと徐々に変化を
もたらす様子が人間らしくなってきて
心温まる感じでした。
菊に嫉妬する吉羅も憎らしくもあったが
可哀そうな女性でしたね。
美人なのに・・・
それぞれがそれぞれを思うが上手くいかず
足踏み状態それに苛立ちすべてが狂ったように
壊れだすそんな物語でした。
怪談話をモチーフにした今作は
明るい雰囲気が見だされない暗く静かな文体で
怪談話ではないですが怪談話のような暗くゆったり
とジメッとした感じがあり終始物語に没頭できる本でした。
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そんな雰囲気作りが素晴らしかったです。
物語の始まり序をしっかり読み踏まえた上で
読み始めると青山家皿屋敷の怪事件について
いったい何が起きたのかが分かりやすく
楽しめて読めると思います。
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悲しい物語でしたが安心して読める良い1冊でした。
そして、最後に青山家につかえる権六なる登場人物は
屑野郎でした。
読んでてイライラしたっ!!
でも、そんな演出もさすがっ!!